2025年3月、米大リーグのロサンゼルス・ドジャースが日本で開幕戦を迎えるため来日し、東京ドームは異様な熱気に包まれた。中心には、世界的スーパースター・大谷翔平がいた。3月15日の巨人とのプレシーズンゲームで、大谷は第2打席で巨人の戸郷翔征投手から特大ホームランを放ち、観客を熱狂させた。打球速度約168.9km、推定飛距離140mのこの一発は、ライトスタンドの看板に直撃。日本でのホームランは2023年WBC以来、734日ぶりの快挙だった。大谷は確信歩きでダイヤモンドを一周し、スタジアムは歓声に揺れた。現地の放送では、タレントの石橋貴明が「うわっ、突き刺さりましたね!」と絶叫し、解説の落合博満も「まあ、化け物ですから」と唖然とするほどだった。
この試合は、日本中が待ち望んだ大谷の凱旋の舞台だった。2024年、ナショナル・リーグとアメリカン・リーグの両方でホームラン王を獲得し、史上初の50本塁打・50盗塁を達成した大谷。ドジャースも2020年以来のワールドシリーズ制覇を果たし、彼の影響力は計り知れない。開幕戦のチケットは販売開始直後に25万人がアクセスする異常事態で、転売市場では1枚200万円の値が付くほどだった。伝説のメジャーリーガー、イチロー氏も「ワールドチャンピオンを日本で見る貴重な機会」と興奮を語り、特に佐々木朗希投手や今永昇太投手の活躍にも注目が集まる。

ドジャースの選手たちも、日本の文化に感動を隠せなかった。キケ・ヘルナンデス選手は、妻と娘と共に原宿で買い物を楽しみ、東京おもちゃ美術館を訪れた。ヘルナンデスは日本のスタッフの親切さに「アメリカ人よりずっと優しい」と驚きを口にした。タイラー・グラスノー投手は婚約者と東京スカイツリーや市場を巡り、「食事は美味しいし、人が良い」と日本を絶賛。アンソニー・バンダ投手は「パンが驚くほど美味しい」と語り、築地市場での食事を楽しんだ。クレイトン・カーショウ投手は家族と相撲体験施設を訪れ、力士との対戦に挑戦する姿がSNSで話題に。ドジャースの地元放送リポーター、キルスティン・ワトソンも、チームラボプラネッツで日本のデジタルアートを堪能し、渋谷や築地の魅力を発信した。

大谷への称賛は、元メジャーリーガーの間でも止まらない。アレックス・ロドリゲス氏は、大谷を「ロジャー・クレメンス、バリー・ボンズ、リッキー・ヘンダーソンを合体させたような選手」と形容し、「メジャー130年の歴史で唯一無二」と断言。バリー・ボンズも、かつて大谷の記念ボールを欲しがったとされ、「彼のような選手は二度と現れない」と認めた。MLB機構のクリス・マリナ氏は、大谷を「世界戦略の宝」と呼び、アジア市場での彼の影響力を強調。エマニュエル駐日米大使も「マイケル・ジョーダンのような存在」と期待を寄せる。

ドジャースのスタン・カステン球団社長は、「日本での試合は毎日がワールドシリーズのパレードのよう」と表現し、開幕戦が歴史的なイベントになると予言。監督のデイブ・ロバーツ氏は、選手の家族同伴を許可し、特別な観光やディナーを計画することで、チームの士気を高めた。USAトゥデイのボブ・ナイチンゲール記者は、「不満の声は一つもない。ビートルズのような熱狂だ」と報じた。

大谷自身は、開幕戦を前に「多くの日本人に活躍を見てもらいたい」と意気込みを語る。ワールドシリーズ制覇直後には「あと9回優勝しよう」とチームを鼓舞し、10年契約の間にさらなる偉業を目指す。東京ドームでの開幕戦は、野球史に刻まれる一戦となるだろう。日本中が、いや世界中が、大谷翔平の次なる一歩に目を奪われている。
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